【法改正】Webアクセシビリティに取り組むべき3つの理由
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- WEB ノウハウ
『Webアクセシビリティ対応はもう当たり前?!』
株式会社アンドエイチエーでWebディレクターをしている田中です。
最近、Webアクセシビリティが改めてトレンドとなっていることをご存じでしょうか?
と言いますのも、最近、Webデザインギャラリーサイトとして有名な『MUUUUU.ORG』を運営しているムラマツさんが、自身のYouTube「ムーテレ」にてWebアクセシビリティを徹底解説している動画をアップしていたり、また、アクセシビリティの配慮に特化したWebデザインギャラリー・サイト『AAA11Y』が人気を集めたりしています。
なによりも、今年2024年4月に行われる法改正の施行により、WebサイトのWebアクセシビリティの配慮への基準が引き上げられます。
そんなWebアクセシビリティはもはや当たり前になりつつ、いや、すでになっていた状況でもあるため、今一度「Webアクセシビリティに取り組むべき3つの理由」として、本記事では解説します。
なお、本記事は、ウェブアクセシビリティ徹底解説。シングルA全項目解説。今真剣に取り組むべき3つの理由。 – YouTube をもとに解説します。
目次
Webアクセシビリティに取り組むべき3つの理由
早速結論として、【Webアクセシビリティに取り組むべき理由】は以下3つです。
- 2024年4月の法改正で努力の基準が上がるから
- トレンドだから
- AI(機械)が読みやすい
以下、詳しく見ていきます。
2024年4月1日から施行される「障害者差別解消法」の改正
2024年4月に施行される「改正障害者差別解消法」で、義務化される対象として事業者も含むことように変更になることで話題になっています。
【改正前】 事業者は、その事業を行うに当たり…(中略)…社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
↓
【改正後】 事業者は、その事業を行うに当たり…(中略)…社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
参考:障害を理由とする差別の解消の推進 – 内閣府 (cao.go.jp)
このように、簡単に言えば、対応努力の基準・対象が拡大します。
「事業者」とは?
ここで言う「事業者」とは、障害者差別解消法上、商業その他の事業を行う者(※1)をいうと定義されています(※2)。営利性や非営利性、個人・法人の別を問わず、株式会社や有限会社など法人自体や、個人企業の場合はその事業主個人が事業者として扱われるものとしており、会社員の我々も含まれているものと思われます。
※1:国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。
※2:障害者差別解消法2条7号
「合理的配慮」とは?
厄介なのが「合理的配慮」という言葉。
「配慮」だけを見ると、思いやりのような強制感の無い?と、日本語として矛盾しているように思われるかもしれません。
そもそも合理的配慮とは、「社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正すもの」とされています。障害のある人から、社会にある障壁を取り除くために何らかの対応を必要としている意思が伝えられたときに、提供側の負担が重すぎない範囲で対応することが求められるものです。
例えば、入口にスロープが無く階段しかない店へ、車いす利用者が入ろうとしている状況があるとします。この場合、階段しかない入口という障壁を作っているのは事業者側です。この原因を取り除くのは、障害者自身が努力・工夫すべきことではもちろんありません。事業者が単なる思いやりで設置するものでもなく、そもそも店を建てる際に設置しておくべき設備です。たとえ入口にスロープを付けることが難しい場合でも、お客さんを追い返すことをせずに手助けして中に入れてあげるといった対応が求められます。これらをしないということは、合理的配慮を提供していない=差別にあたることになります。
このように、合理的配慮とは、障害者が社会の中で遭遇する困りごとや障壁を取り除くためにするべき「調整」や「変更」のことを指していて、障害の程度やその場の状況などで常に変化するため、絶対的なものは存在しません。
そのため、少し難しく感じるかもしれませんが、利用者が不便に思うような状況を作らないための事前措置や事が起こった場合の調整を、提供する側に求められます。
参考:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け> – 内閣府 (cao.go.jp)
参考:合理的配慮とは?障害者差別解消法で法的義務化されます!|公益財団法人 日本ケアフィット共育機構 (carefit.org)
各企業や団体もトレンド
最近、各企業や団体などのWebサイトでも、アクセシビリティを気にしている様子がうかがえます。
例1:デジタル庁の資料
例えば、デジタル庁のアクセシビリティに対する資料が年々増加・アップデートしていています。
デジタル庁は、日本政府によって設立された機関であり、そのアクセシビリティに関する取り組みは、国の指針となる重要な情報源として注目されています。
参考:ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック|デジタル庁 (digital.go.jp)
例2:Appleのサイト
毎年行われるiPhoneの新作発売に合わせて作られているAppleのサイト。以前はスクロールに応じた面白い表現があったのですが、最近は少し控え目なデザインになっており、気にしている様子です。
Appleは世界的に有名なテクノロジー企業であり、彼らのWebサイトの変化は、アクセシビリティへの重要性を示す一例として有効な証拠だと思います。
例3:Awwwardsのブログ
世界中の優れたWebデザイナーや開発者、制作会社を表彰するための権威ある機関として有名な「Awwwards」のブログでも、「全ての人へアクセシビリティを」をアクセシビリティに関すること記載しています。
クリエイティブなWebデザインを称賛しつつ、アクセシビリティにも重視していることを強調することで、アクセシビリティの重要性が広く認識されるように努めているとのことです。
参考:Top 10 Web Design Trends to Elevate Your Website in 2023 (awwwards.com)
例4:STUDIO
ノーコードで有名なSTUDIOでも、STUDIOで作られるWebサイトで対応可能なWebアクセシビリティを紹介するページが公開されています。
100,000を超えるサイトの運用を支える「情報インフラ」のSTUDIOとして、ウェブアクセシビリティの向上に取り組んでいるようで、STUDIOで可能なWebアクセシビリティポイントやWCAG 2.1 Level A, AA対応表などもあります。
現代のWEB体験の重要かつ必須要素に
このように、ウェブアクセシビリティは単なる法的な要件にとどまらず、現代のデジタル体験の重要な要素となっています。アクセシビリティは単なるトレンドではなく、持続的なデジタルサービス提供の必須要件として捉えるべき事とも言えます。
組織や企業がアクセシビリティを重視することは、ユーザーの利用性を向上させ、より多くの人々にサービスを提供するという社会的責任のひとつになりつつあると思います。
AIへの対策にもなる
ほんの最近、ChatGPTやMicrosoft Copilotなどを代表する機械学習や自然言語処理の技術が急速に進化していますね。これらAIに対して齟齬なく理解させるにはやはり、制作側の適切な対策をしていたほうが有利に働くはずです。
WEBサイトの場合、HTMLを軸にコードを書きますが、今後AIの力が強くなるということは機械的にコードを読ませることが増えてくるはずです。例えば、現在のページの内容を要約したり、2次利用として加工してくれたりするAIが登場する可能性があります。
ゆえに、AIが読めるように対策をするということは、AI機能の無い機械でも読みやすいということになります。さらに、機械が読みやすいということは、文字の音声変換や、マウスが無くても操作ができるなどの「ハンデのある人も読みやすい」に繋がります。
このように、ウェブアクセシビリティの取り組みは、単なる見た目上の対応だけではなく、機械が読み取れるということへの対応も必要です。
このあたり長くなるので、さらに詳しく知りたい方は、「コアウェブバイタル(Core Web Vitals)」や「マシンリーダブル」「セマンティクス」などを調べてみてください。ウェブアクセシビリティの向上やAIへの対応について理解を深めるのに役立つはずです。
企業が意識すべきWebアクセシビリティ
先述したように、「環境の整備」に含まれるWebアクセシビリティに対応していないからといってすぐに問題視されるわけではありません。
ただし、使いづらいWebサイトを制作したり放置しておくことは、「合理的配慮を提供していない」ということの裏返しでもあります。法に抵触しないとしても、社会的に問題視されたり、企業イメージへの悪影響にも繋がる可能性もあります。
もし対応しないのであれば、対応しないなりの適切な説明をするといった対応や事前の対策が求められるかもしれません。
特に、国や省庁の公共性の高いサイト、インフラに関わる企業のサイトなど、誰しもが利用するようなサイトにおいては、障害の有無や利用者の違いに関わらずアクセス可能であることが重要です。法改正に対応する姿勢がどれほどあるのか「見られている意識」はより重要性が増す思います。
企業として、アクセシビリティに対する取り組みを通じて、利用者への配慮や社会的責任の重要性を示すことができ、これにより企業の信頼性やブランド価値を高めることができるだけでなく、法的なリスクを回避し、より多くの利用者にサービス提供ができると思います!
WEB制作者が意識すべきWebアクセシビリティ
WEB制作者としては、アクセシビリティがトレンドだからやるという意識ではなく、「普通に対応してます」くらいの温度感で制作をしなければならないと思います。
Webサイトの根本として、障害の有無に関係なく誰もがアクセスし情報を得れるということが強みでもあります。作りてとしては、誰もが同体験を得れるように作ることが責務。
そのためにはまず、アクセシビリティについて理解すること。
先述したような、3つの理由を自分なりに深堀りしてみたり、社内でアクセシビリティMTGをしてみたり、ムラマツさんなどのWeb制作でよく発信されている方の意見を聞いてみたりすると、理解が深まると思います。
また、デジタル庁ではさまざまなアクセシビリティに対する資料があります。まずはここから見てみるのも良いと思います。
※参考:ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック|デジタル庁 (digital.go.jp)
そして次に、みんなで実践すること。
アクセシビリティはデザイナーだけの問題ではありません。デザイナーがそもそも知らないでデザインしていたではシングルAすら目指せません。かつ、アクセシビリティに考慮したデザインだとしても「指示がなかったので」で実装者がHTMLに対して正しくセマンティックなマークアップしなければシングルAは目指せません。さらには、チェックするディレクターが「見た目だけ確認して問題ないと判断」してもシングルAは目指せません。
シングルAと言えど、制作チーム全員が知識を持っている必要があります。
最後に
いかがでしょうか。
ウェブアクセシビリティへの取り組みは、法的要件だけでなく、現代のデジタルサービス提供における重要な要素であり、AI技術の進歩によってよりより効率的に実装できることが求められます。
今一度立ち返り、Web利用者との「対話」を重要視してみてはいかがでしょうか。